3月のある日、彼女から明日の夜空いてる?とlineが来た。
送別会参加を理由にして、夜にまとまった時間が取れたとのこと(^^♪
僕は仕事の関係上、夜でも朝でも日常的に車で外出しているので問題なく外に出られる。
それは良いのだが、問題は何をするかということ。
笑わないで聞いてほしいんだけど、彼女と付き合い始めてから僕は常に溜まってる状態になってしまった。
しばらく休業していた製紙工場が急にフル稼働で製紙し始めた感じ(製紙製紙と繰り返してゴメンなさい)。
…じゃあどうする?
ご飯食べて~、軽くドライブして~、ホテルで熱く絡み合う…
素晴らしいプラン!たまらんたまらん!これで決定!
…いや待て、ちょっと待て。
なんかここんとこ、それ系多くね?
「アタシの身体だけが目当てだったのね~(ノД`)・゜・。」
みたいに思われるのは絶対に嫌だ。
…であれば、アレだ。
やりたかったヤツ。
アウトドアでディナー。
IDからお察しつくとは思いますが、僕はアウトドア大好き。
冬でもキャンプに行きます。
家族は誰も付いてこないので独りで行くんだけど、寂しくなんてないよホントだよ。
そしてそんな僕に負けず劣らずアウトドア好きなのが彼女。
でも僕の家族も彼女のご家族もアウトドアにはほぼ関心がない、というかむしろキライ。
じゃあ2人でキャンプに行けばいいじゃん!とはいかないのがね~、ツライところだ。
代替案として、アウトドアでご飯食べるぐらいはやりたいね、という話は前々からしていた。
その夜、彼女をお連れしたのは東京湾に面した大きな公園。
暖かい季節の週末にもなればたくさんの人が来るんだろうけど、今日は僕らの他にはほとんど誰もいない。
確かにまだ寒い。
寒いは寒いが、風も無く、潮を含んだ空気には春の柔らかさを感じる。
こないだまで冬の厳しさで満ちていたのに…、季節は変わっていくんだな、と感心。
良い場所を求めて海の端までやってきた。
すぐそこには巨大な橋がまばゆく浮かび、海は黒い鏡面となってそれを反射する。
湾を取り囲むビル群の上には東京タワーが顔を出している。
そこもまた、2人の思い出の場所だ。
さらに顔を上げると、夜空を覆う雲の隙間から星が1つ2つ。
申し分のない夜。
芝生の上、街灯と街灯の間に在る暗闇に場所を定めてテーブルを組み立てる。
ランタンに灯を入れると、テーブル上が温かい光で満ちる。
ディレクターズ・チェアにブランケットを敷き、彼女に勧めた。
ポータブルスピーカーからはショパンの夜想曲をネルソン・フレイレの演奏で。
バーナーを持参しているので料理もできるけど、手間と時間を省こうと、彼女がお弁当を作ってきてくれた。
言わずもがな、これが最高なんです(#^^#)
僕らは2人ともイケる口なんで、お酒を飲めないのが残念だけど。。。
いや彼女は飲んでも良いんだけど、運転する僕に合わせてお酒は摂らないという。
代わりにお湯を沸かし、じっくりコトコト系のスープを作って乾杯。
お弁当のディナーだった訳だが、オムライスにから揚げ、本当に美味しかった!
食後のコーヒーをドリップし終わると、彼女が見せたいものがあると言い、写真の束を出してきた。
つい先日、掃除していたら出てきたそう。
なんの写真かと思って見てみると…。
驚いた。
遠い日の僕らが屈託なく笑っている。
当時よくつるんでいた仲間たちと一緒だ。
2人で額をくっ付けるようにして、一枚一枚写真を見ていく。
これはあの時の、あぁこっちはその時の。
若い頃の楽しい時間をホントに多く共有してきたんだな、僕らは。
恋愛感情は無かったけど、時を経て今、こうして東京湾の夜景を前に2人きりでいることに違和感を感じない。
来るべくして、ここまで来たんだね。
唇を重ねるタイミングを計りつつも、目が合うとほころんでしまう頬を止められない僕らだ。