桜前式
桜の季節ですね。
拙いブログですが、読んで下さる方がいらっしゃって驚いています。
せっかくなので伺います(#^^#)
今年は大切な人とお花見しましたか?
これから?
東京でもまだ間に合うよね。
今年の桜はとてもキレイです。
せっかくいい関係になったのだから、今年の桜は2人で見たいね、と話していた僕と彼女。
会えるのは基本的に日が暮れた後なので、どうしても夜桜見物になる。
でもライトアップされた場所となると、どこも人でいっぱい。。。
と思いきや、探せばあまり知られていない場所もあるんだな。
穴場ってヤツ。
いつもの駐車場で彼女と落ち合うと、すぐに車を発進させた。
前もってリサーチしておいた場所へレッツゴー(^^♪
そして僕のポケットには9号の指輪。
交通量の多い幹線道路から、ちょっと信じられないぐらい細い路地に曲がると、100mほど進むだけで完全な田園地帯に入る。
木々の隙間から遠方に高架の首都高が光って見える。
街灯が無いからよく分からないけど、民家も点在する程度。
夜桜の穴場はそんな場所にあった。
少し離れた駐車場に車を停めると、100mほどに渡ってライトアップされている桜の並木道が目に入る。
思わずという感じであがる歓声。
彼女の手を取って、桜並木の方に向かう。
これだけ立派なのに、僕らの他には2,3組の見物客しかいない。
夜空に桜並木が浮いているみたいだね、と彼女。
うん、見上げるような照らし方をしているから、と僕。
近付くにつれ、満開の桜に飲み込まれるんじゃないか、そんな錯覚に陥る。
そしてついに桜に飲み込まれる僕ら。
庇のように張り出した枝が連なり、その下を2人で歩く。
満開の桜の先にまた桜が咲き、その先にはまた一面の桜。
「…桜に溺れてしまいそう」
彼女が呟く。
「…溺れてしまおうよ」
返す声が掠れてしまう。
彼女はつないでいた手を静かにほどき、僕の腕に絡めて身体を預けてきた。
彼女の重みを感じ、受け止める。
僕といてくれて、ありがとう。
君という存在が、存在してくれていて、本当にありがとう。
僕はポケットに突っ込んだ手の先で指輪をつまみ出す。
「気持ちの上で、なんだけど」
彼女が僕を見て怪訝そうにほほ笑む。
「君が大好きなんだ」
優しい眼差しで小さくうなずいてくれる。
「結婚してください」
目を見開く彼女。
やがてまつ毛を伏せ、答えてくれた。
「…はい」と。
今この時を境に、彼女は僕の心の中で妻となり、僕は彼女の心の中で夫となった。
これは、人の前では挙げられない結婚式。
誰にも知られてはいけない結婚式。
ただ、桜の前で僕らは、僕らの愛を誓い合った。
むせ返るほどの、満開の桜の前で。
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